張仲景50味薬証論

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張仲景50味薬証論

  • 東洋
¥4,950 税込
商品コード: 978-4-901767-06-4
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『KAMPO十大類方』の姉妹書である本書は、“張仲景の薬証を明確にしなければ、日本漢方も中医学も本質は理解できない”を主旨としている。張仲景の薬証を把握するために『傷寒論』『金匱要略』の条文または内容を分類・比較・帰納により読んでいけるよう編集したものと言える。極めて経験を重視する張仲景の用薬基準・処方構成の真髄が、著者の臨床的で具体性を尊ぶ精神と中医学的味付けにより明快に説かれていく。単に「傷寒」「金匱」が重要であるという視点ではなく、具体的にどのように大切で何が書かれ、そこから何を学び臨床にどう活かすのかが、臨床家の視点からとてもよく整理され述べられているところが特徴である。A5判、320頁
【目次】
1. 桂枝……………… 1
2. 芍薬……………… 14
3. 甘草……………… 21
4. 大棗……………… 29
5. 麻黄……………… 33
6. 附子……………… 43
7. 烏頭……………… 53
8. 乾姜……………… 55
9. 生姜……………… 63
10.細辛……………… 66
11.呉茱萸…………… 72
12.柴胡……………… 76
13.半夏……………… 85
14.黄耆……………… 95
15.白朮………………103
16.茯苓………………114
17.猪苓………………123
18.沢瀉………………126
19.滑石………………129
20.防已………………132
21.葛根………………135
22.栝楼根……………141
23.黄連………………144
24.黄芩………………152
25.黄柏………………157
26.山梔子……………160
27.大黄………………166
28.芒硝………………177
29.厚朴………………180
30.枳実………………185
31.栝楼実……………191
32.薤白………………195
33.石膏………………199
34.知母………………205
35.竜骨………………209
36.牡蛎………………214
37.人参………………218
38.麦門冬……………227
39.阿膠………………230
40.地黄………………235
41.当帰………………239
42.川芎………………244
43.牡丹皮……………248
44.杏仁………………252
45.五味子……………258
46.桔梗………………263
47.葶藶子……………266
48.桃仁………………268
49.䗪虫………………273
50.水蛭………………275
付録-弁証論治新論…278
方剤索引………………286


【自序抜粋】
●薬証は現代中医学の各種概念の最も基本的で最も重要な要素であり、八綱、六経、病因、臓腑、気血津液、衛気営血、三焦などの各種の弁証法の最も具体化された表現である。薬証を明らかにしなければ、中医学も日本漢方もその本質を理解することはできない。

●薬証には現代中医学で通用している「証」ばかりではなく、西洋医学で認識しているところの「病」を、更には症状、症候群、体質などといった概念までも含んでいる。

●中医学の入門者の多くは、中医学において用薬は理-法-方-薬の過程を厳格に辿りながら行われると考えてしまいがちであるが、実際はまったく反対である。臨床にあたる医師の眼にはまず「某薬証」あるいは「某方証」が浮かび、その後に初めて「某治法」あるいは「某理論」にまで昇華されるのである。

●現在、中医学は凡俗化の傾向が著しく、多くの中医師は往々にして、実践的でない理論に惑わされ、弁証論治は臨床的中身が稀薄な傾向に陥ってしまっている。実際の漢方方剤運用には勿論中医学理論は必要であるが、詰まるところの原因は『傷寒論』『金匱要略』の基礎、特に張仲景の薬証に対する研究が欠乏していることに帰結できよう。

●張仲景の薬証とは仲景一人の経験によるものではなく、漢代以前の用薬経験を総括したものに加え、後世数千年にわたって無数の医家が臨床で検証、証明することによって発展してきたものである。その用薬法は極めて厳格に経験を重視していることが読み取れる。『傷寒論』『金匱要略』は薬証を研究するための最も優れた臨床資料なのである。

●本書は、臨床で常用され且つ張仲景による薬証が比較的明確な薬物50味を選び、『傷寒論』『金匱要略』の条文を比較分析、著者の臨床経験を照らし合わせることにより、「原文考証」「薬証定義」「仲景の配合」「常用配方」の四部構成で薬物の使用基準の明確化に重点を置き論述した。

●歴史上日中両国の医家達は既に目覚しい実績を残してきている。清代の傷寒家・崛起、近代経方家の出現、日本の古方家達による実践など全て一種の理論と臨床規範を創り上げてきた。中でもその代表としては清代の医家鄒澍による『本経疏証』、日本古方派の大家、吉益東洞による『薬徴』が挙げられる。著者の研究はそれらを基礎としている。

●著者の研究を通じて、読者が古典中医学を重視することに喚起されることを願って止まない。


【序】
坂口 弘
日本東洋医学会名誉会員、聖光園細野診療所理事長

 黄煌先生は南京中医学院出身の中医師である。優秀な臨床医であり、かつまた古典の研究に情熱を持つ中堅医師である。約10年前、先生が京都大学老年科に留学しておられるときに知り合い、私達の診療所へ出入りされるようになったが、若いにもかかわらず非常に漢方医学に造詣の深いことを知り驚いたことを記憶している。黄先生と話しをすることにより、先輩の私が教えられることも多々あった。当時黄先生は過去の治験例(医案)の研究に着手しておられ、『医案助讀』という著書を頂いたが、様々な治験例を読む上で参考になる書物であった。

 現在の中国では中医学院を卒業した中医師が殆どを占めるに至っている。中医学院では中医理論に基づいた医学を教えている。中医理論は日本の後世方理論とほぼ同じものと言えるが、それをさらに詳細・徹底化したものと言える。問題はその理論が陰陽五行論を基にした観念的理論であることである。医学理論はあくまでも実際の臨床に則した理論でなければならないが、中医理論はややもすると実際の臨床から遊離したものになる危険性を持っている。医学史に詳しい黄先生は中国の医学史の中でこのように理論に走りすぎ臨床から遊離してしまった時期があると指摘し、中医理論の適度の抑制の必要性を述べておられる。医学は常に実際の臨床に根ざしたものでなければならず、理論はそれに付随し補足するものであるとの考えによるものである。この意味で黄先生は過去の臨床例である医案を非常に大切に考えてこられたと言える。また黄先生は数ある優れた医師の中から徐霊胎(清)を評価しておられる。徐霊胎は『傷寒論類方』を著し傷寒論医学の重要性を訴えた人であるが、同じ時期に当時全く交流のなかった日本でも吉益東洞が『類聚方』を著し、傷寒論医学の重要性を主張している。黄先生はこの吉益東洞の功績も同様に評価しておられるが、東洞が必要な医学理論まで全て捨て去ったことを残念がっておられる。黄先生は日本滞在中、私達の診療所で浅田宗伯の著書を読み、古方の医学を主にし、必要な医学理論を駆使している浅田宗伯の医学が、先生の考える医学に非常に近いことを発見し、浅田宗伯は日本における徐霊胎であると迄言い切っておられる。

 さてこのような黄先生は理論を重視する中医師の中で経方派(日本における古方派に近い考えを持つ流派)に属す医師と言える。このような点から日本の漢方医学にも強い親近感を持ち、日本漢方の良い点も取り入れておられる。黄先生の短い日本滞在中に為した仕事の一つに「体型弁証」と言うのがある。丁度、第6回国際東洋医学会(6th ICOM)が東京で開催され、「体型弁証」につき発表されたが、内容が特に優れているとして会長賞を受賞しておられる。この「体型弁証」は日本の随証治療の考えを取り入れた実践的な医学理論である。

 黄先生は1997年に『KAMPO十大類方』という非常に実践的なテキストを著されたが、これは国際東洋医学会で発表した「体型弁証」をさらに発展充実させた書として日本の漢方医家にとって有用な書となっている。今回出版する『張仲景50味薬証論』は先に出版の『KAMPO十大類方』を薬物面から補足充実した感があり、張仲景の処方構成の真髄を理解するのに非常に参考になる。

 『傷寒論』が著されてから既に1800年の歳月が流れ、疾病の様相も大きく変化してきているが、今なお実際の臨床の場における『傷寒論』『金匱要略』の意義は深く大きいものがある。この張仲景の医学を臨床に活かすためにも、今回出版の『張仲景50味薬証論』と『KAMPO十大類方』の二書は有益なテキストになると期待を大きく膨らませている。





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